宇奈月温泉から黒部渓谷を走るトロッコ電車で1時間15分、
終点の「欅平駅」から更に1時間余り歩いて、
北アルプス白馬岳や鹿島槍岳への富山県側からの登山ルート、
山間の秘湯「祖母谷温泉」が今回の釣行基地だ。
祖母谷温泉を読める人は少ない(失礼!)と思うので念のために・・・「ばばだにおんせん」と呼ぶ。
急峻な流れの渓谷「祖母谷」と「祖父谷(じじだに)」との合流点に建つ歴史ある温泉山小屋に宿泊、
祖父谷に2日間挑んだ。
因みに祖母谷は下流の名剣温泉にも引湯している高温の硫黄泉が河原から湧き出ているため、
魚が住める谷ではないが、一方の祖父谷は大物のイワナが潜むと聞いていた。
「ちょっと行くか・・・」と気軽に竿を出せるところでない難所続きの渓谷だけに、
多くの釣り人が入渓しているとは思えない。
今回の釣行メンバーは健脚を自負し、酒と魚(肴ではない)と温泉をこよなく愛する、
いつもの釣友川崎さんと滝澤さん。
3人合わせて202歳、まさにジジ達が集った釣り場として祖父谷は好適地かも知れない。
朝一番のトロッコ電車に乗るため、前夜は宇奈月駅の8kmほど手前にある道の駅で車中泊。
しかし、夕方には止むという予報に反して一晩中降り続いた雨が朝になっても止まない。
天候が回復したとしても、盛夏でも豊富な水量の黒部川だけに、この降りでは釣りにはならない様相。
いきなり厳しい条件を突き付けられたが、初めてのところだけに行ってみないと分からない。
ダメならゆっくり温泉に入ってのんびり静養・・・と、予定通り行動することにした。
欅平駅から望む黒部川支流の祖母谷川。
案の定、轟音を立てて流れている。
「水量が多い・・・、これじゃあ」と不安がよぎるが、
ここまで来たからには行くしかない。
見ての通り、滝澤さんが背負う80リッターのザックの中身は何だろう?
お腹の出具合と背中に背負うザックと前後のバランスが必要だから・・・・、
と言うことではないらしいが、テント泊でもなく温泉山小屋に宿泊するには、チョット多すぎる気がする。
しかし!中身は釣り装束と釣り具一式に必要不可欠なお酒とつまみ類がびっしりと聞けばうなづける。
欅平駅から5km余りの道程をゆっくり歩いて70分、
長〜いトンネル(歩行者専用、100mはあろうか)を出たところで見えたのが、この日の宿泊先、祖母谷温泉だ。
祖母谷温泉は、祖母谷と祖父谷が出合う、祖母谷側の右岸に建っている、
山小屋風の母屋と左下に見えるのはキャンプ場と日帰り温泉としても入浴客が多い露天風呂だ。
超!親切で温厚な人柄のご主人と奥さんに出迎えられてチェックイン、
まだ10時前というのに「どうぞお部屋へ・・・」と案内してくれた。
聞けば「今日はお客さんたちだけ」と貸し切り状態、3人での個室利用と最高の条件だった。
先ずは、夕食前に岩魚の刺身でいっぱい(これが定番)のために食材仕入れと、
早めの昼食でいざ出陣!ご主人に入渓点や堰堤高巻きのルートを教えてもらい祖父谷へ。
祖父谷は聞きしに勝る渓相で、
このまま額に入れて飾りたい渓谷美だ。
落差の大きな白泡いっぱいの流れだけに、
ポイントは大石の裏側と限られている。
渓に立ち第1投で28cmの岩魚をヒットしたのは筆者。
「すっげえぇ!!これじゃあ10分も釣れば刺身の食材が調達できるよ」と、超!ご満悦。
続いて川崎さんも良型ヒット!
(写真が小さくてすみません・・・右手に持つのは29cm、泣き尺の天然岩魚。)![イメージ 9]()
そして負けじと滝澤さんもヒット。
あっという間に泣尺クラスを3人そろい踏みと相成って、めでたしめでたし。
釣れる岩魚は全て27cm〜29cmで太っている、
刺身用としては最高級の食材だ。
しかし・・・その後は増水しているせいもあってポイントが
少なく、アタリもぱったり途絶えてしまった。
?????水温の微妙な変化か・・・理由は分からない。
遡行を続けるが、急峻な山岳渓流だけに400〜500mごとに堰堤がある。
釣り人が入っていないだけに、踏み跡もない藪漕ぎの高巻きは体力が勝負と言え息が切れる。
「まあ、今日は刺身分だけ釣るのが目的だから・・・」と、
そして翌日の下見を兼ねてなんだからと納得して、しばらくの時間遡行を続けた。
3時になった、「疲れたぁ。もう今日はこれでいいんじゃない?」と誰からとなく納竿のサイン。
3人の魚籠には良型揃いが合計10本納められている、
夕食前のいっぱいの肴、刺身の食材としては十分な量だ。
宿に戻って先ずは温泉で汗を流して・・・というお二人。
(注:法に触れないように、モザイク処理をしました)
その一方、兼カメラマンはキャンプ場の流し場で刺身の調理中!
全部を刺身にというリクエストで、捌くにも時間が掛かる。
良型サイズだけに、身の厚さもあり刺身用としてはこの上ない高級食材だ。
見事!!!に出来上がった刺身皿、
流し場の近くで採ったモミジの葉が、美味しさを倍加させる。
※注:見た目の良さは料理人の腕前と言える(自慢話しだねぇ〜)
刺身に舌鼓を打ち(ワサビはこの日のために、糸魚川のヒスイワサビを下した本生を持参)、
川崎さんが提供してくれた秘蔵の大吟醸酒でのいっぱいは、
釣り人だけが味わえるこの上ない贅沢なものだ。
何せ4時からの大宴会で、すっかり酔い酔いになっているのだが、6時からの夕食は第二弾。
夕食は別腹にと、改めてカンパ〜イで全てお腹に収められた。
夕食後、オーナーのご主人と奥様(温泉宿だから「女将」と呼ぶのがイイのかな?)と記念写真。
冬季は千葉のお宅で、シーズン中は祖母谷温泉でと1年の半分をそれぞれで過ごすという、
羨ましい?いや、大変な仕事だ。
とにかく親切なお二人だけに、初めてというのにもうすっかり常連さんの気分。
これからは春・秋2回、定期的に来ようというのもごく自然に出てくるほど魅力的な宿だ。
<二日目>
昨夜の宴会疲れか・・・起床は5:00といつもより遅め。
昨夜お願いしていた朝食のお弁当、まだ温かい。
6:00ちょうど、お昼は戻ってからと、朝ご飯のお弁当を背負って、2日目いざ出陣!と勇んで渓に向かった。
朝陽がさす早朝の祖父谷。
前日に続いて大型の岩魚をヒットして喜ぶ滝澤さん。
相変わらず尺近いサイズに思わずほくそ笑む。
水量も一晩でずいぶん少なくなり、ポイントも多くなっていたが、さすがに前日ヒットしたポイントに魚は戻っていなかった。
それにしても今回、27cm以下の小さな?サイズは
全く姿を見ないが・・・どうしてだろう?と疑問がわく。
川崎さんの強引?ともいえる立ち入りには閉口するが、
「人が立ち入らないところだからこそ、大きいのが居るんだ」という論はうなづけるだけに、
安全さえ確保できれば止める必要はない。
確かに・・・川崎さんの魚籠には一回り大きなサイズが納められていることが多いのも、そのせいだろうか、ポイントの見極めも腕前?のひとつであることに違いない。
前日の納竿場所から更に上流へと遡行したが、
益々険しい渓相になってきた。
両岸から押し迫る岩壁からの落石にも注意が必要。
そして、川通しで入渓点まで戻ることを考えると、
帰りの時間を考えてもそう奥へと攻め込む訳には行かない。
10時半、早めの納竿でこの度の祖父谷釣行を締めくくることにした。
祖母谷温泉に戻って、温泉で汗を流して昼食。
ゆっくり帰り支度をして、親切な女将とお別れの記念写真を撮り、祖母谷温泉を後にした。
欅平に戻る途中、覗き見る祖母谷川の渓相。
絶壁に囲まれ岩魚たちにとって安全地帯(釣り人から遮断されているという意味で・・・)、
降りれれば大物が居るんだろうが・・・・と、眺めるだけの渓相に思わず唸る。![イメージ 22]()
谷間にひっそり咲く可憐な山野草たち。
大文字草も渓際に咲く代表的なものだ。
帰路は下りとはいえ、何故か重さが往路と変わらない背負うザックが肩に圧し掛かる。
途中の名剣温泉前で一休み。
欅平駅から名剣温泉までは15分程度だが、途中はオーバーハングの岩場の下を歩くだけに、安全第一にとヘルメットが常設されている。
勿論、無料レンタル。
我々は、こうした条件のところへの釣行もあるだけに、
それぞれが自前のヘルメットを持っている。
今回の装備品にも必需品としてリストアップし持参していた。
2日間の祖母谷温泉を基地に祖父谷を攻める計画は、釣行前夜の雨による増水が心配されたが、
予定通りの釣果と、祖母谷温泉での厚遇に十二分の満足と感謝ももって終了することができた。
釣友はじめ、全てに感謝。(完)